やきものの色(釉薬)について
「やきもの」の原料はただの土、これで形を作って乾燥させ、650度以上で焼く(素焼き)と赤みがかった色になり、1200度以上で焼くと白っぽいか茶色っぽい色になります。これが本来の土の色ですが、丈夫で美しく、水漏れや劣化を防ぐといった目的で、素焼きの後に釉薬を掛けます。
釉薬というのは高温の窯の中で化学変化を起こして発色するので、水彩や油絵の具のようにチューブから搾り出した色とは異なります。同じ釉薬を掛けても、元の土の色に加え、焼成するときの窯の状態や掛け方によっても異なってしまいます。やきものの色は、火の力による化学変化によって、素地(もとの土)と一体になって発色し、絵の具にはない質感を備えたものといえます。
従って、同じ名前の釉薬でも、さまざまな条件によって1個1個、微妙にその感じが異なります。(市場に出回っている大量生産の陶器や磁器は、同一規格であるという条件をクリアするための最先端の研究成果が現れているわけです)。
さて、以上の違いを一応置いて、やきものの釉薬について述べると次のようなことが言えます。
1.分類について
(1)質感によると:
透明、半透明、不透明と分けられ、不透明の釉薬はさらに乳濁、マット(やわらかくしっとりした感じ)、結晶(表面にきらきらした小さい粒が見られるもの)と分けられます。
また、表面がつるつるしているか否か(光沢があるかなしか)という分類も出来ます。
(2)釉薬の成分によると:
鉄分があるかないかということで釉薬を分類することが出来ます。鉄分は高温の窯の中でさまざまな作用を及ぼし、発色も多様です。この鉄分の変化を求めて釉薬を調整する場合と、鉄分の影響をきっぱりと排除した釉薬の調整をする場合があります。
(真っ白な洋食器の製作現場では水道水や室内環境のすべてを厳重にチェックして鉄分混入を防いでいるそうです。)
大まかに言えば、鉄分が含まれている釉薬は茶色または黒っぽく重い感じ、そうでない釉薬は明るく軽い感じになります。ただし、青磁という釉薬だけは明るく透明です。
(3)着色料の添加と発色:
やきものの色は、金属酸化物つまり酸素と結合した分子記号を持つ物質(CuO=酸化銅のような)を添加する場合と、わざわざ添加しなくても得られる場合があります。
添加しない場合は原料の中に金属酸化物が含まれているので、窯の中でこれらが釉薬中の他の成分と結合して化学変化を起こして発色するわけです。
発色にかかわる金属酸化物の主なものを上げると次のようなものがあります。
鉄(Fe2O3,FeOなど)、銅(CuO)、マンガン(MnO)、クロム(CrO)、コバルト(BuO)、チタン(TiO2)など。
2.色について
(1)選ぶための考え方:
実物を見られない場合はどうしても色が選択の大きな目安となります。その際には次のような順序で選んでゆくことをお勧めします。その前提として、選んだやきものをどこにおくのか、何に使うのかを想定しておくことです。
- 明るい色がよいか、暗い色がよいか。
- 赤っぽい色がよいか、青っぽい色がよいか、黒っぽい色がよいかなど。
- 表面の光沢があるほうがよいか、ない方がよいか。
- 一様な色がよいか、変化のある色がよいか(簡単に言えばべったりと同じ色か、ムラが出る色か)。
- 重い感じがよいか、軽い感じがよいか(透明感があると軽い感じ、不透明だと重い感じになります)。
(2)焼き方と発色:
同じ釉薬を掛けても、焼成中の窯の状態によって仕上がりが異なります。釉薬の側から言えば、その性質と発色を十分に発揮できる焼き方が理想的で、それには適した温度と時間が必要、さらに焼成中の窯内の雰囲気(湿度とか酸素の状態など)が大きく影響します。
こうして出来上がったものは十分に鑑賞に堪えることができます。(頒布しているものはそのようなものを選んでおります)。
3.釉薬名とその性質(ふくろう工房の釉薬について)
以上の1.2.を前提に、紹介している置物に使われている釉薬について記してみます。写真では分かりにくいときの参考にしていただければ幸いです。
- @ 白萩:
- 白色、半透明。柔らかい感じです。大体どんなものにも適しています。
- A ピンクa:
- ピンク色、不透明。かわいらしい感じです。どこに置いてもよく合います。
- B ピンクb:
- ピンク色、透明。形がよく分かる釉薬です。軽い感じですが、置く場所によっては存在感を主張できます。
- C 玉虫ラスター:
- 銀色の光沢と結晶があります。不透明。華やかな色ですが、置く場所によってはその特色を発揮できないことがあります。
- D 石灰チタン:
- 白色不透明。釉薬が薄くなった部分(縁など出っ張ったところ)は薄茶色に出ますので、置物の顔など凹凸があるところはよく分かります。
- E クロムウグイス:
- 黄緑色、半透明。明るいアオガエルの色です。
- F オリベ:
- 透明な緑色。カエルに合った色です。
- G トルコブルー:
- 明るい水色、透明。軽い感じですが、ピンク色とともにミニカエル、ミニフクロウで最も好まれています。
- H 青磁:
- 水色、透明。わずかな鉄分が発色したもので、湖の底のような深くて上品な色です。どんな置物にも似合っています。
- I カオリンマット:
- 薄茶、不透明。ムラのある表情です。大きな置物では変化があって見飽きることがありません。
- J 飴釉:
- やや暗い茶色、透明。べっこう飴の色で凹凸がよく表われます。どんな大きさ、種類の置物にも似合った釉薬です。
- K 鉄チタン:
- 金色の結晶が浮き出ている明るい茶色、不透明。重く、金属的な色。大きいものはどっしりとした存在感を示します。
- L 青イラボ:
- 黒っぽい茶色で釉薬が溜まったところは青みがかった茶色、表面に茶色の斑点が出る部分もあるという複雑な色を呈しています。不透明。大きいものやヤタガラスではどっしりとした感じを与えます。
- M そば釉:
- 黒っぽいところに茶色の斑点、不透明。「そば」というのは「そばかす」の「そば」でここでは斑点が出ていることです。変化のある表情で、フクロウの各サイズやヤタガラスに合う色です。
- N 黒天目:
- 黒、不透明、光沢あり。フクロウ、ヤタガラスに合う色です。
- O 黒マット:
- 黒、不透明、光沢なし。どっしりして鉄のような金属を思わせる色です。ヤタガラスとフクロウに合った色です。
- P マンガンラスター:
- 黒、光沢あり、不透明。表面に銀色の結晶が出ています。ヤタガラスだけに用いています。
- Q イラボ:
- 「イラ」はイライラするのイラでムラのある色という意味。薄茶不透明。濃いところと薄いところが出る等変化のある色です。大きいものに掛けると面白みがあります。
- R 金茶:
- 金色がかった茶色。光沢、不透明。金属的な強い色なので好みが分かれます。
- S 黄瀬戸:
- 黄色がかった薄茶色、透明。焼成の仕方によっては不透明になります。伝統的な釉薬で落ち着いた色です。やや軽い感じです。
4.置物に用いられている釉薬
- 上の3.で説明した釉薬は、次の置物に使われています。(番号は上の3.の釉薬番号です)。
- カエル大:@、E、F、G、H、I、J、K、L
- カエル中:@、A、C、D、E、F、G、H、K
- カエル小A、小B:@、A、B、C、D、E、F、G、H、J
- フクロウ大:@、B、G、H、I、J、K、M
- フクロウ中:@、A、B、C、D、G、H、I、K、L、M、N、O
- フクロウ小:@、A、B、C、G、I、J、K、M、O
- フクロウミニ:@、A、B、C、D、E、G、H、J、K、M
- タケトンボガエル小:@、A、B、D、E、F、H、K、L
- ヤタガラス中、小:@、C、D、G、H、J、K、L、M、N、O、P